妄人電鉄

山手線に乗る。
山手線に乗りながら妄想する。
向かいに座って化粧している女を妄想で弄んでやる。
でも誰からも文句は言われない。
たとえ、この車内に居るのがオレと彼女の二人きりだとしても彼女がオレにキスを迫って来る可能性はかなり少ない。ほとんど皆無だろう。
たとえ、そこに彼女の連れらしきニット帽の女とオレのとなりのマスクのおっさんが加わり、男女2対2になっても合コンは始まらない。
そういう世界だ、
みんな勝手に妄想し、ここでは無いどこかを見つめている。
この電車はそんな妄想を無限のループの中に閉じ込め23区を疾走している。